それは午後11時55分、思っていたよりギリギリの時間にその場所に着いた。
手には小さな花束一つ。
前もって予約しておいた花屋で閉店間際に受け取ってきたものだ。
明日は僕の彼女、の誕生日。
2年付き合ってきた彼女が明日でまた一つ歳をとる。
そのこと事態は別に大した問題ではないと思うけれど、女性からするとその事実はかなり手痛い衝撃になるらしい。
だからその憂鬱も吹き飛ばすような祝い方をしてあげたい、と思うのは僕のエゴかもしれないけれど。
本気でそう思った僕は、それを実践する為に今 行動している。
彼女が眠るのはいつも午前1時過ぎ。
眠る1、2時間前はほぼ毎日パソコンに向かってネットサーフィンを楽しんでいるのも、本人に聞いて知っている。
それについさっき車を止めた時に、ちゃんとアパートの彼女の部屋の窓に灯りが点っている事も確認済みだ。
腕の時計をチラリと覗く。
予定の時間まであと30秒。
自分の気持ちを落ち着かせる為に、一度深く深呼吸をした。
コンコン。
玄関をノックする。
「はーい」
きっと彼女が出て来るまでの時間はほぼ10秒。
ガタガタと音をさせた後、足音が扉の前に近付いて来た。
「どちらさまですか?」
「こんな深夜にすみません、僕です。八戒です。ここを開けて貰えませんか?」
「え!?八戒!?どうしたのこんな時間に!?ちょっと待ってね、今 開けるから!!」
こんなやりとりが交わされるのに約15秒。
その後ガチャリと鍵が外され、ドアが開くのに5秒程。
そして玄関の扉が開きが見えるのは、午前0時ジャスト。
予定通りにと対面出来た僕は、用意しておいた言葉を目が合った瞬間に口にした。
「お誕生日おめでとうございます、」
「え?えぇっ!?」
予想外の事だったらしく、が目を大きく見開いて驚きを表している。
まあサプライズプレゼントですからね、そうこなくっちゃ面白くありませんけど。
「もしかしてそれを言う為にわざわざ来てくれたの!?」
「ええ、今年の誕生日の一番最初にお祝いの言葉を差し上げたくて」
「それなら電話でだっていいのに」
「それじゃ味気ないでしょう?せっかくなら面と向かって言いたいじゃないですか。それに、プレゼントも一番最初に差し上げたかったですし」
そう言って手にしていた花束を差し出す。
それを見たが本当に嬉しそうに微笑んだから、僕は自分の選んだ花束が彼女の心を和ませたのだとわかった。
勿論、その花達がの好みのものであるのは当然知っていたけれど。
「あ、とにかくここじゃなんだし、入って?」
「すいません、じゃあ少しだけお邪魔しますね」
そう言って部屋に上げてもらう。
そして居間に入ろうかとしていた時、彼女が「あ」と声を上げた。
「何か、入ってる?」
「やっと気付いてくれたんですね」
花束の中を覗き込むようにしている彼女に、そう声を返した。
「何、これ?」
「開けてみて下さい。それもプレゼントですよ」
が花束の中から取り出したのは小さな小箱。
そして居間の机に花束をそっと置いた彼女が立ったままその箱を開けた。
その中にはベルベットの小さな箱。
「アクセサリー?」
「喜んでもらえると良いんですけど」
そう言って微笑んだ僕と一度目を合わせた後、彼女の手がそっとそれを開いた。
「……これって…、もしかして…」
「ええ、そのもしかして、ですよ。俗に言う給料の3ヵ月分ってヤツです」
「ホントに?」
「誕生日プレゼントとしてこんな約束を用意してみたんですけど、受け取ってもらえますか?」
かなりクサイ演出だとは思いはしたが、こんな機会でもなければきっかけもなかなか掴めないと考え出した自分なりの苦肉の策。
ここまでしておいて今更ながら、ひょっとすると突き返されるかもしれない、と少し不安になってそう聞いてみた。
すると目の前のがはにかみながら小さく頷いてくれる。
「ありがとう」
「それは僕の言葉ですよ」
「だってこんな素敵な誕生日プレゼント、初めて貰ったんだもん」
「それをいうなら僕だって。こんなに素敵なお返しを貰えたのは初めてです」
幸せそうなの笑顔を見て、とても幸せな気分になって。
これから先も、ずっと二人でいられる約束を交わすことを許してもらえて。
こんな幸せな事はないと、心の底から思ってるんですよ。
だから僕は、そっとの身体を抱き締めながら彼女の唇に小さなキスをした。
生まれてきてくれて、僕と出会ってくれて、本当にありがとう。
Happy Birthday、。
これからまた1年が貴女にとって幸多いものでありますように。
Special Thanks 風宮陵 サマ
うふふふふふふ〜・・・皆様ご存知、風宮さんからお誕生日プレゼントに頂きました、八戒です。
・・・え?語弊がある?いやいや間違えてないですよ?
八戒をお誕生日祝いに貰ったんですから!(違うって)
まさにサプライズプレゼントでしたよっ!!
これを読んで思いっきり八戒にぐらぐらぁ〜っと偏りました(笑)
時間を計算し、給料の三か月分を花束に偲ばせる八戒・・・カッコイイですwww
という訳で、皆様へ幸せのお裾分けですw
もっと風宮さんの素敵夢に浸りたい方はコチラからどうぞw